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役に立つことがすべてか -統計学さえできれば良い?ー

前回は数学でどのように世界が変わるのかについて言及しましたが、今回は現在の世の中で起こっている事象で、僕が数学の分野で興味を持った対立を紹介します。


■対立

僕は数学者ではないので、数学の権威の○○が××と言っている一方で、△△が□□と言っている、などといった対立は分かりませんが、もっと現実的な対立をピックアップします。

 

それは、証明vs統計です。


証明では、例えばAがBであることを100%正確に示さなければなりませんが、統計の場合は数あるものの中から、最も確率が高いものを選択する(Aは90%の確率でBであるから、Aを選択する)形式をとります。ビジネスのスピードが高まっている世の中では、物事が確実に正しいということを証明する時間・費用を掛けづらくなっています。そのため、現状における最適解を早く探すために、統計的手法がとられることが多いです。少し前にヒットした「統計学が最強の学問である」という本も、時代のニーズに合っているため売れたと思います(他にも理由はあると思いますが)。

 





 


■統計的なアプローチさえできれば良いのか 

「役に立つ」ことをコンセプトとすると、統計学には有用性がある一方で、証明には世の中の役に立たないものあり、必ずしも有用性があるとは言えません。

 

しかし、「役に立つ」ことがすべてとは限りません。哲学者のバタイユが提唱した考えの中に、「至高性」というものがあります。これは、人間の非合理的な幸せのことです。もっと砕けた言い方をすると、世の中の役には立たないけど、自分にとっては幸せなことです。至高性は有用性とは対になる概念です。

大学の研究にも言えることですが、すぐに役立ちそうなことから研究するのは、有用性を追求しているためです。

一部の証明も有用性を持っているとは思いますが、純粋数学をやっている人たちを見ると、至高性のために証明をやっていることが多いと思います。アインシュタインも同様ですが、有用性だけを考えないからこそ、新しい考えが生まれてくるのだと思います。

 
■有用性と至高性を利用する 

有用性と至高性は確かに逆の概念ですが、工夫すれば至高性が有用性に結びつくと思います。例えば、プログラミングが純粋に好きで、独自にIoTデバイスを作っていた場合、仕事のプロジェクトでIoT事業の業務が出てくれば、一気に有用性は高まります。これは至高性のベクトルに、有用性のベクトルが近づいたことを表します。

 

よく言われている 「好きを仕事にする」は至高性がベースにあり、有用性のベクトルを自分の好きなことに合わせていくような形だと思います。

 

また、有用性と至高性のベクトルの向きが違う方向をしていても、この2つの概念を把握しておくことで、ライフワークが改善されると思います。例えば、日中は仕事(有用性)をして、帰宅後に自分の好きなこと(至高性)をすることを考えたときに、至高性のための時間を増やすために、日中の仕事を早く終わらせることを考えます。そうすると、自分は早く帰って好きなことができるため、精神衛生が非常に良くなります。このように、有用性と至高性のベクトルの向きが違っても、この2つの概念を理解してベクトルの向きを確認し、自分に合った行動をすることで、より良い生活ができると思います。

 

■まとめ

 

今回は証明vs統計から始まり、有用性と至高性の対比へと、話を広げていきました。どちらかが必ず重要というわけではないですが、どちらの概念も知っておくことで、日々の考え方も変わってくると思います。最初は数学から話を始めましたが、数学に興味のない方も、これからの考え方が少しでも変わるきっかけになればなと思います。

 

ではでは