MBA,MOTよりも必要なDTM(Data Technology Management)
今回は最近のニュースを題材として、今後データを扱うにあたり、必要になると思われる考え方について話を展開していきたいと思います。
■データで成功する企業、失敗する企業
「データには価値がない」ーそのような発言をする人に見てほしい事例があります。愛知県碧南市の旭鉄工の事例です。旭鉄工は秋葉原で仕入れた数百円の汎用センサーをベースにIoT 化を始め、最終的には設備投資で4億円、労務管理費で1億円の削減に成功しています。
このような企業とは逆に、数億円の設備投資をして、いわゆる人工知能やビッグデータのシステムを導入したにも関わらず、そのシステムを使用せずに費用だけがかかってしまったという事例が数多く存在します。
これらの成功事例と失敗事例を比較したときの差は何なのでしょうか。そこには、「価値設計」の考え方が重要になります。
「価値設計」とは求められる価値と、その価値を提供するための手段をつなぐ方法です。この方法としては、例えば工場内のコストカットを実現するという価値に対して、ロボットを導入したり、故障を未然に防ぐためのシステムを導入するなどといった、「価値→手段」の考え方と、技術を使って何かできないかという「手段→価値」の考え方があります。
ただ、後者の「手段→価値」の場合には、逆方向の「価値→手段」も考えなければ、価値設計が不十分になります。例えば、価値設計が不十分な場合によくあるのが、企業の中で「AIで何かできないか」「IoTで何か新しいことができないか」という意見が飛び交い、目的や価値を考えずに手段にこだわるといったケースです。確かに技術シーズを基に、実現できることを考えることも大事ではあるのですが、シーズ(特にAIのようなバズワードに関するもの)にこだわり過ぎて、目的を見失っているケースが存在します。AIの最先端システムを導入しなくても、実はエクセルでマクロを組めば、1時間で必要な機能を実装できたりすることもあるのです。
その一方で、成功事例の企業はAIやIoTなどの手段に手を出す前に、何が自社の課題なのか、AIやIoTなどの手段を用いて何を実現したいのかが明確になっていることが多いです。例えば、冒頭の旭鉄工の場合では、最初にすべきことして、「見える化」を掲げています。これによって、工場内のどこに無駄があるのかを可視化できるようにしています。この段階で、必要なものは高性能なIoT機器ではなく、1個50円の光センサーや1個250円の磁気センサーなのです。これらのセンサーによって工場内の見える化を実現し、さらに見える化した結果から、工場内の課題を洗い出し、その課題を解決する工夫がされています。その結果、最終的に5億円もの費用削減を実現しているのです。
このようにデータを使って成功する企業と失敗する企業には大きな差があります。そこで必要になるのは、価値設計を含む” Data Technology Management (DTM) ”の考え方だと思います。DTMとは、企業がデータを集め、データから価値を出していくために必要なマネジメントのことです。データをいかにビジネスに活かしていくか、その時に注意するべきことは何かを経営の観点から考えられる能力が求められています。データを扱うにしても、分析をするためのアルゴリズムや統計的手法の観点、データを蓄積するための基盤の観点、個人情報を扱う場合の法律的な観点、データやサービスをどのように売っていくかというビジネスの観点などなど、様々な視点が求められています。
■DTMの構造
DTMはManagementとData Technologyの2つから構成されると考えます。