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リサーチ・デザイン 【分析手法】

前回の投稿では、以下のリサーチ・デザインの要素から、「研究課題」について掘り下げました。
今回は研究課題を類型化するところからはじめて、具体的にどのような分析手法があるのかを説明したいと思います(理論~推論技法まで、ざっくり説明します)。

リサーチ・デザインの要素

・研究課題:どのような問題を何を目的にしてリサーチするのか

・理論   :リサーチの枠組みとしてどのような理論を使うのか

・データ  :実証するためにどのようなデータを使うのか

・推論技法:データから推論するためにどのような技法を使うのか 


■研究課題の類型化と分析手法

研究課題について、まずはじめに以下のマトリックスを用いて類型化を行います(以下図参照)。

縦軸に理論化水準(すでに理論が構築されているか)、横軸にデータの利用可能性をとります。

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*「リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術ー」(白桃書房, 著:田村正紀)より


この2軸から、分析方法を大きく4つに分けられます。

1. データの利用可能性:低, 理論化水準:高, 例:ゲーム理論による戦略行動の数学モデル構築

2. データの利用可能性:高, 理論化水準:高, 例:金融工学、確率的消費者行動モデルの実証

3. データの利用可能性:低, 理論化水準:低, 例:ベンチャービジネスのフィールドワーク

4. データの利用可能性:高, 理論化水準:低, 例:POSデータベースのデータマイニング


図の左下の、理論化水準が低く、データの利用可能性が低いものに関しては、「ベンチャービジネスのフィールドワーク」等が挙げられます。ベンチャービジネスなどは、先進的で事例数が少ないことが多々あります。そのためこの領域では、データ数が少なく、これといった理論は存在しにくい状況です。


一方で、右上の「金融工学、確率的消費者行動モデルの実証」に関しては、データの量も充分にあり、すでに理論も構築されています。また、理論化水準はまだ低いですが、「POSデータ」を利用したデータマイニングも進んできています。


■技術進歩によるマトリックスへの影響

このようにデータの利用可能性が高い(マトリックスの右半分)研究課題に対しては、いわゆる「ビッグデータ解析」が用いられます。IoTの時代になり、モノがインターネットにつながることによって収集可能なデータも増えます。それにしたがって、より多くの種類と量と活用した分析が可能になるのです。


さらにAIの飛躍的な進歩によって、理論化水準も向上していきます。例えば、The Economistの記事によると、近年の経済学の論文では、「Machine Learning(機械学習)」を用いた論文の数が増えてきています。

経済学は合理性を追求する学問なので、「最適化」を追求する機械学習との相性が極めて良いのではないでしょうか。


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以上の結果、今後もIoT等によってデータの取得量は増え、AIによって理論化水準も高くなってくることが予測されます。


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■具体的な分析手法の例

以上のような分析は、まずデータが量的か質的か(数字を使っているか、言葉をつかっているか等)、分析単位の観察数が多いか少ないかを判断していく必要があります。観察数が多い研究が定量分析になり、逆に少ないと定性分析になります。

分析方法の例を以下に示します。


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分析は定量分析がいつもベストとは限りません。たとえ母数は少なくとも、個別のインタビューやグループインタビューの方が、深く問題をとらえることができたり、仮説を作る上で有効なケースがあります。定量的な数字の背景にある構造やメカニズムを洞察するには、定性的分析アプローチが不可欠なのです。

■終わりに
今回は分析手法をいくつか挙げました。様々な状況に応じてどのような分析手法を使うのか、ざっくりと把握していただけたらと思います。
ただ、今回も具体的にどうやってその手法を使うのかは、まだ説明していないので、次回以降はさらに具体的な話をしていきます。