Innovation Tips

Innovation, Data Science, Research, Business, etc.

リサーチ・デザイン 【課題の掘り下げ】

前回は分析の心構えを説明しましたが、今回の投稿では分析の進め方について考えていきたいと思います。
今回のテーマとなるのは、「リサーチ・デザイン」です。

■リサーチ・デザインとは

リサーチ・デザインとは、「リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術ー」(著:田村正紀)によると、以下の要素の構想のことを言います。
・研究課題:どのような問題を何を目的にしてリサーチするのか
・理論 :リサーチの枠組みとしてどのような理論を使うのか
・データ  :実証するためにどのようなデータを使うのか
・推論技法:データから推論するためにどのような技法を使うのか 

分析をするにあたっては以上のように、
1.目的を明確にしたうえで
2.リサーチの枠組みを考え、
3.そこで必要となるデータを集めて、
4.データから何が言えるかを考える
という流れになります。
それではまず、「研究課題」について、具体的に考えていきたいと思います。

■研究課題の掘り下げ
前回の投稿でも書きましたが、分析は最終的に「良い結果」を出すために行います。
そのためにも、最初にあるべき姿を描き、現状とのギャップを把握します。そして、そのギャップを埋めるための方法を考えて実行します。
ここではまず、「問題発見力」が必要になります。この問題発見ができないケースが実はよくあります(自省の意味も込めて)。まずは問題を把握しないと何も進まないので、この最初のフェーズは非常に大事です。
問題発見ができないのは、以下の4つの理由があります(参考:問題解決プロフェッショナル)。
 
①問題を定義する前提となる「あるべき姿」を、的確に描けない
②「現状」の認識・分析力が低く、正確な把握ができていない
③「ギャップ」の構造を解明して、問題の本質を具体化・優先順位付けすることができていない
④実行可能な「解決策」から逆順で短絡的に問題をとらえるために、広がりを失う

asis_tobe


ここでは、特に①と③に着目します。

①について
「あるべき姿」を構想し、問題を発見するためには、以下の4つのPがあります。

(1) Purpose:何のために
(2) Position:誰にとって
(3) Perspective:どの範囲で
(4) Period:どの時点で

これらの観点から総合的に考えることで、「あるべき姿」をより明確にすることができます。
自分と異なる視点を複数持ち、また具体化して考えられるレベルまで視点を変えることで、より深い思考をすることができます。


③について
現実とあるべき姿のギャップを明確に把握できていなければ、実際のアクションに反映されません。そこで、問題の本質を考えるための3つの視点があります。

(1)拡がり:抜け漏れがないか
(2)深さ:Whyを追求し、本質的なところまでたどり着けているか
(3)重さ:何が重要か把握できているか

また、「重みづけ」が必要な背景には、以下の3つの理由があります。

  1. 企業の組織は、部門や階層など、どのポジションに立つのかにより、問題の見え方・問題の重要性が大きく異なる。そのため、フォーカスすべき問題を特定しない限り、同じテーマであっても問題点が異なり、解決策の方向性が分散してしまう場合がある。

  2. 企業の抱える問題が唯一無二ということは極めて稀であり、多くの場合は問題・課題が多岐にわたる。

  3. あらゆる問題を解決するために資源と時間を分散させてしまうと、ひとつひとつの解決策のレベルが低く、中途半端になってしまう場合がある。


④についても少しだけ触れておくと、よく言われる仮設思考は結論に導く背後の理由やメカニズムを把握しておかないと、ただの思い付き・偏見になってしまいます。

以上のような観点から問題を的確に把握することに注意して、まずは課題を掘り下げて考えていくことが大事になってきます。 

■終わりに
今回は課題を掘り下げについて考えてきました。
そろそろ、実際の分析はいつやるのかという声が挙がるかもしれませんが、しばしお待ちください。
この下準備をしっかりとしておかないと、後で無駄な作業をたくさんすることになります。

次は、また少し具体的な話になります。だんだんとやることが具体的になっていく様子を感じていただけたらと思います。