Webデータ取得・分析のための必須アイテム
今回も引き続きデータの取得について書きます。IoTやAIがまだまだバズワードとして広がっていき、データの流通量が増えていくことには間違いありません。
ただ、簡単にデータを取得すると言いますが、実際にはどのようにしてデータを取っているのでしょうか。特に実体のないWeb上のデータ(PV等)はどのような仕組みで取られているのでしょうか。今回は初めにビッグデータの取り扱い(プラットフォーム等)の話しから入っていき、特にWebデータを中心に議論していきたいと思います。
■ビッグデータを扱うにあたって重要なこと
実際にデータを扱うにあたって、通常はまず、既存のデータを統合させることから始まります。その際に重要になるのがDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)です。DMPは簡単に言うと、蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォームのことです。
DMPが取得するデータは、Webサイトのアクセスデータや広告配信データ(自社データ)だけではなく、リアルプロモーションデータや、SNSデータ等(外部データ)も含めた統合データです。
・DMPの概要
ここで、データを取得すると言いましたが、そもそもどのような仕組みでアクセス解析等を行っているのでしょうか。具体的に、何をもってページが閲覧されたと判断しているのでしょうか。
そのカギになるのが、「タグ」です。
■タグとは何か
タグとはHTMLの要素やJavaScriptを利用して、ページを開いたWebブラウザから外部のサーバーに対して情報を送信するための仕組みです。
具体的に仕組みを説明します。
まず、Webコンテンツの中にタグを埋め込みます。こうすることで、Webブラウザによってページが開かれたときに(図中①)、サーバーに画像などの要求をすることができます(図中②)。
この際に、ユーザーのページ閲覧などの情報を外部サーバーに送信することができます(図中③)。このようにタグによって行われる要求(HTTP)をビーコンと呼びます。このビーコンの中にアクセスしたページ情報やクリック情報等、ユーザーに関する様々な情報を含んで送られてくるのです。
*上記のようなウェブビーコン方式以外にも、サーバーログ方式やパケットキャプチャ方式等もありますが、今回は、後々Adobe Tag ManagerやGoogle Tag Manager等を使うことを想定して、ウェブビーコン方式に話を絞ります。
簡単ではありますが、以上のような仕組みで、ユーザーのアクセスデータ等を取得することができます。
しかし、タグには様々な種類があり、多くのタグを設置することによる問題点も存在します。
■タグ設置の複雑化による問題
- タグを利用するたびにHTMLの修正が必要
新しい解析や施策のニーズが生まれるたびにWebサイトのHTMLを修正する、計画から実装まで時間・コストがかかります。 - タグ実装の不備がデータ欠損を誘発
タグによって取得されるはずだったデータが、実装不備によって取得できておらず、欠損値となってしまいます。 - Webページの動作の遅延
複数のタグを読み込む際に、無駄なタグが存在するため、その分の読み込みに余計な時間がかかります。
そこで、登場するのがタグマネジメントです。
■タグマネジメントとは
一言でいうと、バラバラなタグをまとめて管理する手法のことです。
従来は各サイトに個別のタグを設定して、何か修正があるたびに個別にタグの設定を変更していました。その場合、上記で挙げられた問題が発生していましたが、タグマネジメントツールを使用することによって、タグを一括管理することができるようになりました。
■タグマネジメントツールが有する5つの機能
- 変数の共有
ページのタイトルや商品番号・商品名、ボタンのクリックなどWebページ内の様々な要素を変数という形で定義しておくことが可能です。これによって、定義した変数を他で利用する際にもスムーズな引き渡しが可能です。 - クリックなどのページ表示以外の計測
Webサイトの最終到達地がPDFなどのダウンロードであったり、リンク先の管理外のサイトなのでタグが実装できないといった場合は、そのアクションが発生するリンクをクリックしたときにタグを実行するということがあります。また、スマートフォンサイトでは、電話を掛けるためのリンクが用意されている場合もあります。そのような計測を自分で開発するのは困難ですが、タグマネジメントツールが機能を用意していることもあります。 - エラー検知
Webブラウザでエラーが発生した場合、それをサーバー側で検知するのは大変なのですが、タグマネジメントツールによってはエラーが発生した時にタグを実行することで状況の把握が行えるものもあります。 - タグ構成のバージョン管理
新たに追加したタグが不具合を起こした時や過去に使ったものを再利用したい時など、過去の状態に簡単に切り替えられるようにバージョン管理を行います。 - 動作検証
設定したタグを本番公開する前に、どんなタグが実行されているかを確認するためのツールです。タグの配信ルールやページの変数の検証に利用します。
■タグマネジメントの6つのメリット
- データ収集率・精度の向上
タグマネジメントツールを使うことで、すべてのページに一意の解析タグを設定することができます。これによってデータ収集率の向上や、安定した測定環境を確保し、分析の精度を高めることに繋がります。 - 効率化
効率化の観点では以下2点が挙げられます。
1)ウェブサイトの開発サイクルにおけるタグの追加、削除、編集の機能を強化
2)新たな開発等の必要性を最小限にする。
これにより、内部リソースの観点からも、より速くより安価なタグマネジメントが実行可能になります。 - 柔軟性の向上
タグマネジメントツールは、複数のアプリケーションから複数のタグをサポートし、任意のページにそのタグを適用します。これによって、特定のページへのタグの運用やプロジェクトの目的に沿った運用についての柔軟性が向上します。併せて、単一のベンダー依存やツールベンダーのスイッチングコストも削減できます。 - タグの運営管理の簡便化・責任の明確化
タグマネジメントツールによって、タグの管理責任をITからマーケティングやウェブ解析チームに移行しやすくなります。 - 標準化
タグマネジメントツールによって、アプリケーション、サイト、およびユーザー間でのタグの標準化を強制的に進めることができます。このような一貫性を保持することによって、広範な測定フレームワーク、共通の分析手法、ベスト·プラクティス、プライバシーやコンプライアンスなどがサポートできます。 - 読み込み時間の削減
タグマネジメントツールは、タグの重複した変数の統合、共通のショートカットの削除、必要とされるタグのみの表示機能などによってウェブページを軽くし、ロードパフォーマンスを向上させることができます。
■収集したデータの分析フレームワーク例
タグを使用することによって、ユーザーのクリックデータやコンバージョン等のデータを取得することができます。
- コンバージョン(CV)とは
ウェブサイト上で獲得できる最終的な成果のことを言います。
オンラインショッピングサイトならば商品購入、情報提供サイトやコミュニティサイトならば会員登録などがコンバージョンにあたります。
サイトへのアクセス数に対して、コンバージョンに結びついた件数の割合をコンバージョンレート(率)と呼びます。
例えば、クリック率とトランザクションコンバージョン率を用いて以下のような分析をすることができます。
(参考)「データ・ドリブン・マーケティング」より一部改訂
もちろん、クリック率(CTR)とトランザクションコンバージョン率(TCR)が高いとキャンペーンが順調に進んでいると考えられるため、文句はありません。
CTRが高く、TCRが低いということは、ページが移ってからの魅力が少ないということで、そのページのキャッチコピー等を改善する必要があります。
CTRが低く、TCRが高い場合には、クリックされた時には、そのまま会員登録等がされるということなので、クリックに導くような広告が必要になるでしょう。
CTRもTCRもどちらも低い場合には、もはやキャンペーンの打ち切りを検討したほうが良いかもしれません。
CTRが低く、TCRが高い場合には、クリックされた時には、そのまま会員登録等がされるということなので、クリックに導くような広告が必要になるでしょう。
CTRもTCRもどちらも低い場合には、もはやキャンペーンの打ち切りを検討したほうが良いかもしれません。
■おわりに
デジタルマーケティングが複雑化していく中で、まずは様々な情報を統合していくことが求められます。そのつなぎ役となるのが、「タグ」です。インターネット広告やSNSがさらに発展していくことが充分に考えられ、さらにIoTやAR・VRを活用してマーケティングをすることも予想され、複雑化も増していきます。このような状況であるからこそ、データ取得を厳密に管理するタグマネジメントが重要になるのです。
参考文献
http://dmlab.jp/adtech/dmp.html
http://www.visionalist.com/column/beginerstips/02.html