Wi-Fiの次に来るもの "Li-Fi" ―IoT時代の5GとLi-Fiの関係―
2017年は様々な技術のインフラ整備が行われます。その中でも第5世代移動通信システム(5G)の実証実験が始まります。5Gは今のPCやスマートフォン等に使われている4Gの次の規格です。
- 高速通信: 最大で20Gbpsの通信速度や、LTEの1000倍の大容量化
- 同時多発接続: 同時接続数端末数が100倍
- 超低遅延: 1ミリ秒以下の遅延(自動運転等に対応)
5Gはスマートフォン等の通信だけでなく、ヘルスケアや教育、VRの分野でも使われます。
ネットワークの低遅延化・広帯域化で実現する新サービス・アプリケーション
VRの分野では、人間が頭の向きに自動的に目の位置を合わせる前方動体反射(VAR)に必要な7ミリ秒を超える遅延があると違和感を生じるため、ネットワーク部分での遅延は1ミリ秒程度に抑える必要があります。
また、自動運転でも1ミリ秒以下の低遅延化が必要になります。
このような5G通信は、2020年頃には商用化され、一般の方が使用できる予定になっています。
*5G参考資料
しかし、5G技術には、室内で電波が干渉したり、壁などで電波が減衰する等といった課題があります*(*telecoms.comより)。
また、従来の電波を使った技術全てに通して言えることですが、航空機内や手術室等では電波を発する機器は使用することができません*(*Light Fidelity (Li-Fi) - The bright future of 5G visible light communication systemsより)。
そこで、注目されている技術が"Li-Fi"です。
■Li-Fiとは何か
Li-Fiとは、"Light Fidelity"の略で、LEDを使った光空間無線通信の一種です。光空間無線通信とは、その名の通り光を使った通信方式で、大きく分けると、赤外線を利用したものと、可視光を利用したものがあります。古くはリモコンなどの赤外線の利用に限定されていましたが、最近ではLED照明が普及したため、LEDを通信目的に使用する技術が盛んになってきています。
そこで、無線通信帯域の確保をする必要があります。その中で注目されているのがLED可視光等を使った光空間通信なのです。
Li-Fiの使用イメージ
Source: Pure Li-Fi.
Source: Pure Li-Fi.
- 高速通信
現行のWi-Fiよりも通信速度が100倍以上速いです。 - 省エネ
大量の電気を消費する電波塔が必要なWi-Fiよりも、エネルギー効率に優れています。電波塔の送電効率はなんと5%しかないそうです*(*TED:ハラルド・ハースのプレゼンより)。
Li-Fi開発者のドイツ人物理学者ハラルド・ハース(Harald Haas)氏の構想通り、光検出器の電源を太陽電池でまかなえば、ワイヤレス充電とインターネットへの無線接続が同時にできるようになるかもしれません。 - 室内等でのつながりやすさ
電波の干渉・混雑や電波がつながらない場所に悩まされることがありません。 - セキュリティ
Li-FiはLED電球の光が直接当たる場所でなければ使えないので、家の外にいる人間は屋内のシステムに侵入できません。よって、Wi-Fiよりセキュリティ面が向上するそうです。
以下に代表的な応用例を挙げていますが、PureLiFi社によると、以下の応用先だけでなく、様々な応用が考えられるようです。
参考:Applications of Li-Fi
- スマート照明
- モバイル通信
- 電波が使えない病院内や航空機の中等
- 自動車、交通システム
etc
Li-Fi自体は以前から開発されてきましたが、近年注目すべき動きがありました。
まずは以下にLi-Fi関連技術の代表的な出来事を整理しています。
ここで注目すべきなのは、AppleがLi-Fiを将来のiPhoneに搭載すると言われていることです。
AppleもLi-Fi技術を高く評価しているのではないでしょうか。
シンガポールのIMDA( Info-communications Development Media Authority)では、これから来るLi-Fi技術で世界をリードし、先頭に立つことで競争優位性を高めることを目指しています*(*pureLiFi in Singapore working to implement leading wireless innovation)。
一方で国内では、豊田中央研究所がLEDを用いたV2V(車車間通信),I2V(路車間通信)の研究を進めています。
電波を使った通信ではなく、光を使った通信をすることで、車同士が速い通信(低遅延通信)を行うことができ、加減速などのスムーズなやりとりをすることができます。
光を用いたV2Vの概要
出典:Optical Vehicle-to-Vehicle Communication System Using LED Transmitter and Camera Receiver
■まとめ(今後の展開)
Li-Fiにはまだまだ課題もありますが、次の通信技術としては非常に魅力があります。
ただ、Li-Fiが出てきたらWi-Fiはもういらないというわけではなく、両者は補完関係にあります。
例えば、パソコンとLEDでデータの送受信をする時に、パソコンに受光機はあっても、Li-Fiを使ってデータを「送信する」装置が付いていないケースが考えられます。その場合には、動画等のダウンロードはLi-Fiでスピーディに行い、アップロードはWi-Fiやケーブルを使って行うことができます。
Li-FiとWi-Fiの使用例
Source: Pure Li-Fi.
またLi-Fiは光を使っているため、外での使用にまだ対応できていない部分もあります(豊田中央研究所のV2Vの技術は、外での光通信対策をしています)。
一方で5G(電波)は外での通信に強いので、外では5G、中ではLi-Fiを使うなど柔軟な切り替えもできると、こちらも補完関係になり得ると思います。
僕はLi-Fiはまだ実験室レベルの技術だと思っていました。
しかし、AppleがiOSのコードでLi-Fiについて言及していることや、シンガポールが国としてLi-Fiを進めようとしていることを鑑みると、これからLi-Fi技術が一般の方に使用される日も近いのではないでしょうか。
*図中の情報ソース
1) https://en.wikipedia.org/wiki/Li-Fi#cite_note-19
2) https://web.archive.org/web/20130818120053/http://visiblelightcomm.com/li-fi-consortium-is-launched/
4) http://purelifi.com/what_is_li-fi/the-lifi-story/
5) http://www.wired.co.uk/article/the-lightbulb-moment
6) http://purelifi.com/what_is_li-fi/the-lifi-story/
9) http://purelifi.com/what_is_li-fi/the-lifi-story/
10) http://ieeexplore.ieee.org/document/6887317/
Optical Vehicle-to-Vehicle Communication System Using LED Transmitter and Camera Receiver
12) https://www.ted.com/talks/harald_haas_a_breakthrough_new_kind_of_wireless_internet
13)http://purelifi.com/what_is_li-fi/the-lifi-story/
15) http://luxreview.com/article/2016/02/breaking-apple-set-to-add-lifi-capability-to-iphone
16) http://ieeexplore.ieee.org/document/7454688/
A New Automotive VLC System Using Optical Communication Image Sensor