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【MaaS】自動車に0円で乗るための事業を創る

ふと、自動車に0円で乗る方法はないかと考えました。
現在では多くの人が車を所有していますが、当然のように車は数百万円かかります。車は高価なので所有することは考えず、タクシーやカーシェアにおいて車に0円で乗る方法を考えていきます。
 
目次
 

どん兵衛タクシーの先行事例

既にDeNA日清食品がタッグを組み、料金0円のどん兵衛タクシーを都内で走らせていました(現在期間終了)。この事例では、日清食品とタクシーマッチングプラットフォームのMOVからの広告料によって、乗車料金をカバーしていました。
タクシー事業者にとっては、契約スポンサーとMOVの双方から広告宣伝費を得られる。つまり、仮に乗車料金分が契約スポンサー収入とほぼ同じならば、MOVからの収入がタクシー事業者にとっての利益となる。さらに、新しい顧客層へのタクシー利用を促進することで顧客数が伸びる可能性がある。
 
具体的な収支は公開されていませんが、実際に利益が出たのであれば非常に有望なビジネスだと思います。だたコストの面で気になるのは、タクシー運転手の人件費です。なぜなら、既存のタクシー事業において人件費は総コストの約73%を占めるためです。

 
1台当たりの総人件費を少なめに見積もって30万円/月(@東京)だとすると、1ヶ月の総コストは約43万円、年間コストは約516万円になります。
 

■カーシェアのコスト構造を考える

一方、カーシェアの方はどうでしょうか。まず、少し寄り道をして市場規模を見てみます。ボストン コンサルティング グループの調査によると世界のカーシェアリング市場の規模は 2015 年から2021 年にかけて約7 倍に拡大し、世界のカーシェアリング市場は2021年に47億ユーロ(約6,300億円)、利用者数は3,500万人になると言われています。このように今後成長が見込まれるカーシェアの事業構造はおおよそ以下の通りです。

*注:コスト構造から考えられる収益性が確保できる稼働率は、主な利用時間帯である日中、少なく見積もっても30%、実際は以下のような要因により、50%程度の稼働が必要となると想定される。・割安のパッケージでの販売が一定存在する。例えば、Timesの場合、6時間パックは4,020円時間当り670円となり、上記試算で使った800円より割安となる・詰め込んだ稼働ができない。カーシェアの場合、稼働と稼働の間に30分~ 1時間程度間を空けておく必要がある。万一、前のユーザーが遅延した場合等に対応できなくなるためだ。結果、実際の稼働以上に、販売できる分母は小さくなる
 
 
カーシェア(1台)のコストは1年で約146万円、1ヶ月約12万円です。このコストはA.T.カーニーの分析ですが、実際の事業ではどれほどのコストになるのでしょうか。日本で最もカーシェアの規模が大きいサービスである「タイムズカープラス」の収益・コスト構造を見てみましょう。
 
 
「タイムズカープラス」は既に10%以上の利益が出ており、会員数も順調に伸びている事業です。
2018年の段階ではコストが1ヶ月約9.4万円であり、A.T.カーニーの分析結果よりもコストが2万円以上低くなっています。

■タクシーとカーシェアのコスト比較

ここで、タクシーとカーシェアの1台・1ヶ月当たりのコストを比較してみます。

・タクシーのコスト:少なめに見積もって約43万円
・カーシェアのコスト:約12万円(高い見積りのA.T.カーニーの試算を採用)

これより、タクシーよりもカーシェアの方がコストを1/3以下に抑えることができそうです。タイムズカープラスの現状のコストを目安にするならタクシーよりもコストを1/4以下にできます。
 
カーシェアの方は実はまだコストを削れます。A.T.カーニーの分析では、車両としてコンパクトカーを扱い、それを180万円と見積もっています。これを削りましょう。
車両は新車ではなく、走行距離の少ない中古車を使うことで安く抑えられます。ざっと120万円まで減らすと、年間の減価償却費が40万円になります。
車両の1ヶ月当たりの減価償却費が4万円を切るまでになりました。
(なお、中古車の場合はメンテナンスコストが新車よりも少しかさむことが考えられます。)
以上より、カーシェアのコストはまだ削れる見込みがあります。

■カーシェアコストを広告で賄えるか

以下では
・カーシェアのコストは1台当たり12万円/月
・東京23区内でのカーシェア
を想定して話を続けます。
 
以上の前提のもと、既出のどん兵衛タクシーのように広告宣伝車として車両を活用し、広告収入を得るモデルを考えます。具体的にどの程度広告収入を得られるのでしょうか。ここでは、一般企業が広告宣伝車を発注した場合にかかる料金を参考にして、カーシェア事業者の収益を考えます。
 
 
広告宣伝車の料金を色々と調査をした結果、大型のトラックではなく、小型の車で1日当たり最低8万円(車両レンタル代、運転手の人件費を含む)はかかるようです。(例:http://www.ryouma.jp/senden-car/index.html)
 
これは、走行するコース・時間が決まっており、新宿・渋谷など人通りが多い箇所を広告宣伝車が走るケースを想定されているため、宣伝車と比較して稼働率が下がるカーシェアの車両に広告を載せる場合には、広告料を下げる方が妥当です。そのため、日中の稼働率を(A.T.カーニーの見積もりよりも低く)20%として設定し、広告費も広告宣伝車の20%に設定してみると、1日あたり約1.6万円になります。
さらに、カーシェアでの移動先はユーザーの自由であり人通りが多いところに行くとは限らないと考えると、広告費はもっと安くて良いかもしれません。思い切って1日1万円にしてみましょう。そうすると、カーシェア事業者の広告収入は1ヶ月30万円になります。
車は駐車場に止まっている間も、看板のように広告機能が一応あるので、もっと広告料は高くても良いかもしれませんが、シミュレーションでは低めに設定してみます。
 
しかし、広告を車に掲載する場合、車のボディに広告の加工をする必要があります。これも色々と調査したところ、約30万円はかかるようです。
(例:https://dessin.co.jp/seibutaxi/seibutaxi.html)
凝ったデザイン・表面加工・広告掲載終了後の広告除去作業も考えて、さらに倍の約60万円かかるとし、これを1年で支払うとすると1ヶ月当たり約5万円のコスト増になります。ここで1台・1ヶ月の推定収支を計算します。

・収益:30万円(広告収入)
・費用:12万円+5万円(1年間のみ) = 17万円
・利益:13万円
 
しっかりと利益が出ました。
広告収入の見積もりはもっと減らしても大丈夫そうですね。
確かに、一般的な看板広告と比較すると広告料は高いので、どの程度の価格にするかはまだ検討の余地があります。
 
以上、ざっくりとした計算をしてきました。
しかしながら、現状の案はまだまだアップデートできます。
 
 
少し長くなったので、次回は以下の項目でつづきを書きます。
 
■広告の掲載方法を深掘りして考える
■今後0円車両を実現するにあたっての考察
■さいごに

 

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本記事と同様の内容を以下にも記載しています。 

https://note.mu/tak1/n/ndf015f40c491